【開業したけどお客さんが来ない!?】分娩なし出張専門開業の実態

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開業したいけど、それで生活していけるのかな…?

開業してみたけど、問い合わせがほとんどなくて…

分娩なしの出張専門開業を考えている、またはすでに開業している助産師さんの中には、そんな疑問や悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

分娩なし出張専門開業って実際どうなの?

キタガワ
キタガワ

出張専門開業を経て
現在は施設あり分娩なしの助産院を営んでいる私が解説します!

助産師の働き方はさまざまなので、自分がどういう働き方をしたいのか、なにを優先したいのかで活動方法は変わってくると思います。

しかし選ぶにしても、実態がわからないと選びようもないと思うので、私の体験談や、周りを見ていて感じたことなどをまとめてみました。

これはあくまで私の体験談なので、どの地域でも当てはまるものではないと思います。「こんな経過を辿った人もいるんだなぁ」という感じで見てもらえますと幸いです。

私がどういう経緯で「分娩なし出張専門開業」に至ったかはこちらをご覧ください↓

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開業するだけではお客さんは来ない

ひとつ、はっきり言えることがあります。

キタガワ
キタガワ

開業しただけではお客さんは来ません!

開業前の私は「お店をひらけば人は来る」と思っていました。産後のお母さんたちから「相談先がなくて困った」という話を何度も聞いていたので、その相談先を作れば、人は来るだろうと。

でも、実際なかなか来ないんですよね。これはどんな商売でも、開業されている方の多くが感じていることだと思います。お客さんは、お店があるだけでは来ないんです。

分娩なし出張専門開業の特徴

しかし、分娩なしの出張専門開業はリスクが低いので、開業したい気持ちがあるならチャレンジしてみるといいと思います。

その理由は以下です。

金銭面でローリスク

これがいちばん大きな理由。

例えば飲食店をやろうと思ったら、物件を契約し、内装を業者さんに依頼、調理器具などいろいろ揃えなければいけません。開業するまでにかなりの費用がかかります。さらに開業してからも、家賃や光熱費のほか、食材などの仕入れにもお金がかかる。お店を維持するだけで、毎月それなりのお金が必要です。

対して、出張専門の助産院は出費がほぼありません。開業の際に助産師賠償責任保険に加入すること(2024年5月現在年間24,000円/年)、助産師会に入会すること(地域により違うかもしれませんが、東京都だと25,000円/年)、あとはベビースケール(検定付きの精度の高いものでも10万円以内で購入できます)。まとまったお金がかかるのはそれくらいで、その他はエプロンとか手袋とか、手指消毒グッズとか、安価なものばかり。

さらに、自宅が事務所となるため、家賃や水道光熱費などの一部を経費にできます。

自分の身ひとつあれば維持費がほぼかからないのは、とてもありがたいことです。

開業手続きが簡単

保健所に開業届と助産師免許証のコピーを出すだけなので、思い立ったらすぐに開業ができます。(屋号は考えておいてもいいですが、なくても大丈夫です。)

税務署への開業届も、簡単な書類を持参するだけ。
青色申告をしたければ、開業届と一緒に税務署に届出を出せばいいです。

これらも費用はかかりません。かかるのは免許証のコピー代くらいです。

開業は簡単だけど、集客が大変

このように、開業は書類の提出だけ。必要な物品も少なくすぐに準備可能。毎月の維持費もかからない。開業だけなら誰でもすぐにできます。しかし問題は、なんども言いますが集客です。

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私の場合〜出張専門開業2年間の実態

自治体の産後ケア訪問型事業をやるために出張開業

私が出張専門開業をしていたのは2019年3月〜2021年4月の2年間。そもそもの開業のきっかけは、自治体の産後ケア訪問型事業に従事するためでした。

屋号は「助産師 北川真貴」。
この頃だっこ紐の使い方をレクチャーする資格をいくつかもっていたので、提供するメニューは授乳相談とだっこ練習のふたつでした。料金は、たしか授乳相談が1回8,000円、だっこ練習は90分で5,000円だっだような?出張範囲は自宅から自転車で行ける範囲にしぼっていた(これも明確に決めているわけではありませんでした)ので、基本的に交通費などは請求していませんでした。

とにかくこの頃は、「お店があれば人は来る」と安易に思っていた時期なので、本当にただただ開業しただけの状態でした。出張範囲さえあやふやとか、今考えると呆れます。

宣伝はほとんどしていない

そもそも開業時点で、私はシフト制で週3〜4日保健所の非常勤勤務をしていました。子どもがまだちいさく一人でお留守番ができないので、土日は家を空けられない。なので開業助産師として動ける日にちは限られており、その曜日もバラバラでした。宣伝しようにも、「週1〜2日不定期で出張しています」なんて書いて誰が依頼してくる!?と感じたのでむしろ書かないほうがいいのかなと思ったし、そうなると何をどこにどう伝えればいいかもわからない。そんな中でやったことは以下です。

助産師会地区分会の助産師マップに掲載

私が活動している地域の助産師会は毎年「助産師マップ」を独自に作成していました。このてのマップは赤ちゃん訪問で産後の方に渡されていたりするらしく(それも自治体によるようです)、私もこのマップに載せれば、近所のお客さんから依頼が来るかなと考えました。掲載料は年間数千円。

結果、このマップ経由で連絡をくれた人は、2年間で数名。(片手で足りるくらい)

だっこ紐資格の資格取得者紹介に掲載

もうひとつ、私はだっこ紐の資格を持っていたので、そのメーカーの資格取得者紹介ページに名前を載せていました。こちらも、年に数名(片手で収まるくらい)のお問い合わせが入るかな、という程度の反応でした。

ちなみに、現在の私はさまざまな資格を持っており、それぞれの組織のホームページに「認定資格者」として掲載されていますが、そこからのお問い合わせはどこも同じように少ないです。まったく無駄なわけではないし、資格があればどんどん掲載してもらうといいですが、それだけでお客さんがたくさん来ることはほとんどないのでは?と感じています。

体制を整えられていなかった

このときの予約方法は、電話とメール。自分の携帯電話番号と、フリーのメールアドレスを助産師マップに載せているだけでした。営業日時もはっきり提示せず、「詳細はお問い合わせください」的な表現にしていました。今になって思えば、いつ何をしてくれるかもわからない人に、そもそも「お問い合わせ」しようなんて思わないですよね。

支払い方法は当日現金払いのみ。

出張範囲もぼんやりしていて、「遠方は交通費の実費をいただきます」というスタンスでしたが、自分の中でどこまでの訪問に対応するかとか、どこから交通費を請求するかとかが曖昧でした。

この記事を書きながら、当時の曖昧さに震えています。

産後ケア訪問型の依頼は少なかった

楽しみにしていた自治体の産後ケア訪問型事業ですが、こちらも当時は相当依頼が少なかったです。

月に0〜4件の依頼。
4件ある月はまれで、だいたいは1件か2件でした。

まだ制度が周知されていなかったのが大きいと思いますが、思ったより依頼が少なくて、とても悲しい気持ちになったのを覚えています。産後ケア訪問型は開業が必須なので、助産師会の入会費用や保険料などで年間4万円ほど払っているわけですが、それを回収できるのはいつ?と思えるほどの依頼の少なさ。当時は本当に、毎日毎日依頼を心待ちにしていました。

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私の場合〜出張専門開業2年間の収入

実態を知ると安心(?)する方がたくさんいるのではと思うので、この2年間の収入も公開します。ここでいう収入は、産後ケア訪問型事業と、出張専門開業に直接依頼があったお仕事での収入になります。

まず1年目。
開業した2019年3月から同年12月までの10ヶ月間で

キタガワ
キタガワ

売上高は…

12万円でした!

そして2年目。
この年は新型コロナウイルスが流行し、4月から6月は外出自粛期間でした。
2020年1月から同年12月までの実働9ヶ月間で

キタガワ
キタガワ

売上高は…

15万8千円でした!

ここから助産師賠償責任保険料や助産師会年会費、その他経費など引かれるので、収入はごくごくわずかです。「仕事は趣味程度にできればいいの」という人にはいいかもしれませんが、とても生活できる金額ではないと思います。

なので私は
1年目は保健所の非常勤勤務を、2年目は保健所非常勤を辞めたので、月数回の健診事業のアルバイトと、年末からは赤ちゃん訪問事業の仕事もはじめました(これらは開業しなくてもできる仕事です)。

そして3年目に、アルバイトをやめて施設あり分娩なし開業に舵を切ることになります。

それについてはこちらをご覧ください

しかしこれは、出張専門開業が悪いのではなく、私がしかるべき対応をまったくとっていなかったから、当然の結果といえます。助産師マップに掲載しただけでお客さんが来るなんて、ありえないことだと今はわかります。

実際周りを見ても、出張専門で依頼が絶えない方はいらっしゃいます!

やるべきことをやれば、結果は出る

施設あり開業から、おかげさまで3年が経過しました。現在はアルバイトをすることなく、自分の仕事でマイペースに生活できています。

急なおっぱいトラブルにすぐ対応できたり、予約が入っていない時間は勉強や新メニュー開発に充てたりできるこの働き方を、とても気に入っています。

やりたいことをすぐに決断、実行できるのが、個人事業主の最大の魅力です。

妊娠中から産後、さらには更年期まで、幅広いお悩みに対応できるよう学び続け、その学びが必要な人に届くように、これからも活動していく所存です。

まとめ

いかがでしたか?

最初からもっとうまくやっている人はたくさんいると思いますが、その人たちは開業届を出して待っていただけではなく、時間と手間をかけて、お客さんに伝える努力をしています。むかしの私のようにただ開業しただけでは、思うように人が来ず落ち込む可能性が高いです。

でもそれは、あなたに才能がないわけではなく、やり方が少し違っているだけです。地域には、相談先を見つけられず困っている人がたくさんいます。

私もいつも、もっともっと助産師の存在や活動が世間に伝わって、救える人が増えるにはどうすればいいのか考えています。

直接聞きたいことがある方は開業支援をご利用ください。私の体験を惜しみなくお伝えしています。

開業を考えている助産師さんへ | ソラチ助産院
開業を考えている助産師さんへ、開業へ向けた支援をします。実際に開業している助産師がセッションを担当。対面、オンラインどちらも対応。



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